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パパに聞く
第7回 林家木久蔵さん 落語家 父である林家木久扇(先代木久蔵)師匠ゆずりの“フラ”のある芸風と明るいキャラクターで、若手真打ちのホープとして落語界のみならず各方面で活躍する林家木久蔵さん。実生活では3歳の女の子と1歳の男の子のパパとして、ユニークな子育てを実践されているようです。落語会出番前の楽屋におじゃまして、楽しくもためになるお話を聞かせていただきました。撮影/坂井信彦

子育ては、高座よりもよっぽど大変。

「ああ、子育てなんて僕にはムリ!」。長女を授かったばかりのころ、家で1日カミさんのママぶりを見ていて、最初に思ったことです。

落語家の仕事なんて、高座に上がって長くても数十分でとりあえず終わっちゃうわけですけれど、子育てというのは24時間ずっと続く仕事で、終わりがないんですね。自分の子どもである以上、それこそ永遠にやるものなんだなぁと。母親というのは凄いな、無償の愛というのはこういうことを指すのかと、つくづく思いました。

僕が父親としてできることなんてたかが知れてますが、カミさんもそれを分かっていたようで、僕は端から期待されていませんでした。芸人というのは、基本的に子どもの生活サイクルと真逆ということもあって、いまでもカミさんは「子育てを手伝うのは当たり前」とは考えていないんです。だから僕がたまに手伝うと、いつも「ありがとう」としか言わないんですよ。こういう関係がごく自然にできていきましたね。その方が僕も気が楽だし、カミさんもストレスを感じなくてすむというわけです。

落語家というのは旅も多いですし、いつも家にはいられない商売です。僕の父親がまさにそうでしたが、その分、いるときは目一杯接してくれましたので、自然と自分もそうするようになりました。

僕としては、子どもが学校に行く年齢になる前に、なるべくたくさん接しておきたいと思っているんですよ。休みの日はまず家族サービスが優先です。動物園や水族館に行ったり、家で遊んだりします。僕は子どもに日本の四季を感じてもらいたいと思って、いろいろな年中行事を考えているんですよ。地元のお祭りはもちろん、梨狩りに出かけたり、菖蒲湯に入ったり・・こういうことは親が積極的にならないと、いまはなかなか経験しづらくなりましたから、僕が率先して連れて行きます。

でも、子どもの吸収力というのはまるでスポンジみたいで、見るもの、触るものをどんどん吸収していくものですね。僕の好きな熱帯魚の図鑑を見て、次の日には魚の名前をそらで言っていたりするのを見ると、父親としてたまらない気分になります。

父親の仕事を子どもに見せることが一番。

僕自身は小さい頃から父親の仕事を継ぐことを考えるでもなく、高校時代まではプロ野球選手に憧れていましたし、大学では演劇を専攻しました。演劇の勉強をしているうちに、演劇は集団でやるもので人間関係も複雑だし、なかなかその他大勢から抜け出せないなと感じるようになって、落語というものを再発見したんですね。落語は一人で主役になれるし、表現という意味では同じだと気づいたんです。でも結局、父親の生き様を目近に見てきたことが、僕を落語の世界に向かわせたような気もするんですよ。

いまどきの子どもは、自分の父親の仕事ぶりを実際に見るということがなかなかできません。商店街のお店の子とかであれば、父親が一生懸命働く姿を見て、いろいろ感じることができると思うんですが、会社勤めのサラリーマンだとそうも行きません。みな自分が大人になってから、初めて父親の存在の大きさやありがたさを知ることになるわけですが、本来ならもっと早いうちに、10代の多感な時期に気づいた方がいいんです。

僕は「父親の仕事参観日」みたいなものを学校でやって欲しいなと思っているんですよ。父親は子どもに対してあれこれ言ったりするよりも、その生き様で教えるというのがしっくりくると思うんです。どんな父親でも、子どもにとって尊敬できる存在でありさえすれば、それがりっぱな「父親の子育て」になるんじゃないかと思います。

僕はいま、落語でお客さんを笑わせるという商売を楽しんでやっています。そんな姿を自分の子どもに直接見せられるというのは、2人の子を持つ父親としてとても良かったなと思います。夢は、親子三代で高座に上がること。別に息子を落語家にしたいというわけではないんですが、早いうちに一度高座に上げておきたいと思っているんですよ。

がんばらない子育てのススメ。

僕は小さい頃から動物が好きで、カメとかフクロウとかいろいろな動物を飼いました。いまも海水魚とカブトムシを飼っています。そんな経験から教わったことは、動物はあまりいじくり過ぎたり、構い過ぎると長生きしないんです。子どもと動物をいっしょにするなと言われるかも知れませんが(笑)、実は子育てに通じるところはあるんじゃないかと思っているんです。

以前、父との共著で「がんばらない子育て」(教育評論社、2007)という本を出したんですが、子育てというのは、けっしてがんばってやるものじゃなくて、あくまで自然体でやるものだと思うんです。僕はいまも2日続けて休みがある時は、1日目は家族優先ですが、2日目には自分の趣味の時間も作ります。けっして無理はしません。あと、人間には喜怒哀楽という感情があって、それがときに表に出ることがあってもいいと思うんです。感情を押し殺していい父親であろうとすればするほど、そんなメッキはすぐにはがれます。「お父さん、無理してる」って、子どもに見透かされますよ。

子どもとは一生の付き合いですから、長い目で考えた方がいいですね。

【インタビュー日:2009年10月16日】


プロフィール

はやしや・きくぞう

1975年東京都生まれ。本名・豊田宏寿。玉川大学文学部芸術学科演劇専攻卒業。95年に実父である初代林家木久蔵(現・木久扇)に入門し、林家きくおとなる。99年二ツ目、2007年9月真打ちに昇進するとともに、落語界でも珍しい“生前贈与”という形で、二代目林家木久蔵を襲名し話題をよんだ。 期待の若手真打ちとして全国各地で高座をこなすかたわら、テレビ・ラジオへの出演、新聞や雑誌での連載など、マルチに活躍中。

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